結婚式の一日には、何人かの手が入ります。お料理をつくる人、髪を結い、顔を整える人、花を生ける人、その時間を残す人。ふだんは別々の場所で、別々の仕事をしている人たちです。その人たちが、ある一日、ある家族のためにだけ、同じ場所に集まる。ここでは、シェフ・ヘアメイク・フローリスト・写真家が「その一日のために編成される」ということが、何を意味しているのかを、集まる順番と、手と手の重なりから書いてみます。
結婚式のチームが「一日のために集まる」とは、どういうことか
THE SHORT ANSWER
先にお答えします。顔ぶれが先にあって、そこへ家族を迎えるのではなく、家族のお話を伺ってから、その一日に手を入れる人を決める、ということです。シェフも、ヘアメイクも、フローリストも、写真家も、その一日のために編成されます。決まるのは、人より家族のほうが先です。
これは、プランより家族を先に置くという考え方を、人の側に当てはめたものです。順番の話そのものは結婚式は、決まったプランに家族を合わせるものかに、「誂える」という言葉の全体は結婚式を「誂える」とは、どういうことかに書きました。この記事で扱うのは、集まる人たちのことです。
シェフ・ヘアメイク・フローリスト・写真家は、一日のどこに手をかけるのか
FOUR PAIRS OF HANDS
四つの仕事は、同じ一日に入りますが、手をかける時間の置き方がそれぞれ違います。仕事の性質から並べてみると、こうなります。
| 仕事 | 手をかけるもの | 仕事の性質 | 先に知っておきたいこと |
|---|---|---|---|
| シェフ | 会食のお料理 | 食べる時刻に向けて、仕上がりを合わせていく | 食べられないもの、食べにくいもの、食卓を囲む人の年齢 |
| ヘアメイク | 当日のお支度 | 式の前に、その人の髪と顔に直接手を入れる | 思い描く姿、衣装、髪の長さや肌のこと |
| フローリスト | 装花 | 生きているものを、その日の場所に合わせて生ける | 会場の様子、季節、色の好み、苦手な香り |
| 写真家 | フォトツアーと会食の写真 | 一日のはじめから終わりまで、その場に居合わせる | 誰と誰を一緒に残したいか、どんな一枚を家に置きたいか |
並べてみると、どれも「その日、その人たち」がそろわないと仕上がらない仕事だと分かります。お料理は、食べる人が決まってはじめて献立になります。花は、生ける場所と季節が決まってはじめて形になる。お支度は、その人の顔と衣装の前でしかできません。写真は、そこに居合わせることそのものが仕事です。前もって作り置いておけるものが、ほとんどない。四つの仕事がその一日のために集まるのは、仕事のほうが、もともとそういう性質を持っているからでもあると思います。
結婚式の朝、ヘアメイクが会場で支度を整えられるのはなぜか
WHAT THE LAW SAYS
四つのうち、ひとつだけ、法律が「儀式のため」という言葉で場所を定めている仕事があります。髪を結い、化粧をする仕事です。
美容師法は、結髪や化粧などで容姿を美しくすることを「美容」と定め、第七条で、美容師は美容所以外の場所で美容の業をしてはならない、としています。ただし、政令で定める特別の事情がある場合は、この限りでない。その政令、美容師法施行令の第四条には、美容所の外で業を行える場合が三つ挙げられています。
| 号 | 美容所の外で美容を行える場合(美容師法施行令 第四条) |
|---|---|
| 一 | 疾病その他の理由により、美容所に来ることができない者に対して美容を行う場合 |
| 二 | 婚礼その他の儀式に参列する者に対して、その儀式の直前に美容を行う場合 |
| 三 | 前の二つのほか、都道府県(保健所を設置する市・特別区では、その市・区)が条例で定める場合 |
出典は、美容師法(昭和三十二年法律第百六十三号)第二条・第七条と、美容師法施行令(昭和三十二年政令第二百七十七号)第四条です。条文はe-Gov法令検索で読むことができます。
二つめの号に、「婚礼」という言葉と、「その儀式の直前に」という言葉が並んでいます。会場で髪を結い、顔を整えるお支度という形は、この一行の上にあります。読み返すと、少し不思議な気持ちになります。この仕事は、法律の言葉のうえでも、ある儀式の、その直前のためにだけ、場所を越えてよいことになっている。一日のために集まる、ということが、ここでは条文になっています。
お支度を誰と、どこで整えるかは結婚式のお支度を、誰と・どこで整えるかに書いています。
一日ごとに編成するチームと、顔ぶれの決まったチームは、何が違うのか
WHO COMES FIRST
いつも同じ顔ぶれで動くチームには、それならではの良さがあります。互いの呼吸が分かっていて、言わなくても通じることが多い。ここで比べたいのは、その良し悪しではありません。違うのは、やはり順番です。
顔ぶれが先に決まっているときは、家族はそのチームのところへやって来ます。一日ごとに編成するときは、家族のお話が先にあって、そのお話を受け取る人が、あとから集まります。たとえば、食卓に小さな子どもと高齢の祖父母が並ぶ家族と、大人だけで長くお酒を囲みたい家族とでは、同じお料理の仕事でも、先に考えておきたいことが変わってきます。家族が先に決まっていれば、その違いを、人を選ぶ段階から一日に入れておけます。
そして、そうやって集まった顔ぶれは、その家族の一日のためにそろったものです。写真家がプロデュースする結婚式に書いたとおり、私たちは写真の仕事から生まれた会社で、残すつもりで一日をつくります。編成のまんなかに、いつも写真家がいるのはそのためです。
四つの仕事は、どこで重なり合うのか
SIX MEETING POINTS
四つの仕事は、別々に進むわけではありません。四人いれば、二人ずつの組み合わせは六つあります。四かける三を二で割って、六。その六つの組み合わせのそれぞれに、仕事の重なるところがあります。
| 組み合わせ | 重なるところ |
|---|---|
| シェフ × フローリスト | 食卓の上。花の高さや香りと、お皿の置き場所 |
| シェフ × 写真家 | 会食の時間。お皿が出る頃合いと、食卓を撮る頃合い |
| シェフ × ヘアメイク | 一日の並び。お支度が終わる時刻と、会食の始まりまでの時間 |
| ヘアメイク × 写真家 | お支度の時間と、そのあと。整えた姿が、外の光のなかでどう写るか |
| ヘアメイク × フローリスト | 髪や胸元に添える花があるときの、色と大きさ |
| フローリスト × 写真家 | 会場の装花が、写真のなかのどこに入るか |
どの組み合わせを見ても、重なっているのは、その家族の一日のなかの、ある場所とある時刻です。仕事どうしの重なりは、一日ごとに違ってきます。食卓に誰が座るかで花の高さの考えどころが変わり、季節で外の光が変わり、それにつれて写真の頃合いも動く。六つの重なりは、家族が決まってはじめて、中身が決まるものです。
会食の写真で何を残しておくかは結婚式の会食中の写真は、何を撮っておくべきかに、一日の並べ方は結婚式当日のタイムラインは、どう作るのかに書いています。
家族のことは、どうやってチームに伝わるのか
ONE CONVERSATION
四つの仕事に、それぞれ家族のことを伝えるとしたら、新郎新婦は同じ話を四回することになります。そのうえ、さきほどの六つの重なりは、四回の話のどれにも入りきりません。重なりは、二つの仕事のあいだにあるからです。
ジェリッシュ・ウェディングでは、お打ち合わせで伺ったことを、私たちがそれぞれの手に渡していきます。新郎新婦がお話しになるのは、私たちに一度。そこから先、四つの仕事と六つの重なりに振り分けていく役は、プロデュースの仕事として引き受けます。お打ち合わせは、オンラインと、横浜での対面で。何をどこで決めるかは結婚式の打ち合わせは、オンラインで何を決められるかにまとめました。
伝えるときに、上手な言葉はいりません。「父はあまり写真が得意ではない」「祖母は少し耳が遠い」「姉は花の香りが苦手」。そういう、ふだんの家族の話のほうが、四つの仕事それぞれにとって、手がかりになります。
チームがそろうのは、いつ・どこなのか
WHERE THEY GATHER
その一日のために編成された顔ぶれが、この家族のためにそろうのは、その一日がはじめてです。そろう場所は、その日、まるごと一家族だけのものになった会場です。
たとえばワクテラスなら、チェックインは午前十一時、チェックアウトは翌日の午前十一時。挙式も、会食も、ご宿泊も、同じ会場のなかにあります。次の組のために片付けを急ぐことも、別の会場へ道具を運び直すこともありません。手を入れる人たちにとっても、その日のその場所は、ひとつの家族のためだけの仕事場になります。会場の様子は会場のページで見ていただけます。
新郎新婦の側から言えば、手を入れる人の何人かとは、当日にはじめて顔を合わせることになるかもしれません。はじめての人に大切な時間を委ねる心細さを小さくするために、思い描く姿をお打ち合わせで伺い、当日へつないでいます。当日に何かが変わったとき、誰がどう受けとめるかは結婚式当日の変更に、どう備えるかに書きました。
一日のために集まるチームについて、もう少し詳しく
A CLOSER LOOK
含まれるものの一覧はプランと料金のページに、最初のご相談から当日までの順序はご相談から当日までの流れに、よく伺う問いと答えはよくあるご質問にあります。
結婚式のシェフやヘアメイクは、どのように決まりますか?
シェフ・ヘアメイク・フローリスト・写真家は、その一日のために編成されます。先に顔ぶれを決めるのではなく、お打ち合わせでご家族のお話を伺ってから、その一日に手を入れる人を決めていきます。
新郎新婦が、ひとりずつと打ち合わせをする必要はありますか?
お話しいただくのは、ジェリッシュ・ウェディングに一度です。伺ったことを、お料理・お支度・装花・写真のそれぞれに渡していく役は、プロデュースの仕事として引き受けます。お打ち合わせは、オンラインと横浜での対面で進めます。
チームの費用は、別にかかりますか?
総額の目安150万円から200万円に、挙式・お料理・ご宿泊・衣装・ヘアメイク・装花・写真・プロデュース料まで含まれています。内訳は一組ごとにお見積りします。
道具は、その家の敷居の手前で待っている
四つの仕事は、どれも作り置きができず、その日、その人たちの前でしか仕上がりません。四人いれば重なりは六つあって、その中身も、家族が決まってはじめて決まります。髪を結う仕事にいたっては、法律の言葉のうえでも、儀式の直前のためにだけ場所を越えることになっている。一日のために集まる、というのは、気持ちの話である前に、仕事の形の話なのだと思います。
花のバケツも、道具箱も、包丁も、その日、ひとつの家族の一日の前に、少しずつ間をあけて置かれます。何がどこに置かれるかは、まだ決まっていません。決めるのは、これから伺う、ご家族のお話のほうです。

