結婚式場を探すとき、たいていは写真から入ります。まだ行ったことのない場所ですから、まず写真を見る。それはとても自然なことだと思います。ただ、写真を見て会場を選ぶことと、いい写真の残る一日にすることは、じつは同じではないようにも思うのです。ここでは、結婚式場を写真映えで選ぶことをどう考えるか、そしてその前に置いておきたいことを書きます。
結婚式場は、写真映えで選んでよいのか
PHOTOGENIC
手がかりのひとつにはなります。ただ、いちばん先に置く基準ではないと思います。
写真映えという言葉は、便利なぶん、指しているものが少し広すぎます。建物の形のことなのか、庭の緑のことなのか、窓から入る光のことなのか。中身をほどいてみると、そのうちのいくつかは、そもそも会場が持っているものではありません。雰囲気で会場を比べていくと決まらなくなる、という話はテラス・庭・館内。結婚式の会場は、何を手がかりに選ぶかに書きました。ここでは写真という一点に絞って、その中身を分けて考えてみます。
それでも写真のことを考えるのは、間違っていません。一日が過ぎてしまえば、残るのは写真のほうです。ジェリッシュ・ウェディングは写真の仕事から生まれていて、残すつもりで一日をつくるという考え方でご案内しています。だからこそ、写真のために会場を選ぶという順番は、いちど疑ってみる価値があると思っています。
写真映えする会場を選べば、結婚式の写真は良くなるのか
IN THE FRAME
写っているのは、場所だけではありません。
一枚の写真のなかには、だいたい三つのものが入っています。場所と、光と、人です。このうち、会場を見学して確かめられるのは場所だけです。光はその日その時刻のもので、人はその日そこにいた人の顔つきです。会場を選ぶという行為で決められるのは、三つのうちの一つだけ、ということになります。
そして、あとから見返したときに目がいくのは、残りの二つのほうではないでしょうか。壁の色を思い出すために写真を開く人は、あまりいないように思います。開くのは、その日どんな顔をしていたかを見るためです。
結婚式の写真の光は、会場で決まるのか
THE HEIGHT OF LIGHT
会場では決まりません。その日その時刻の、太陽の高さで決まります。
光の具合を言葉にするのは難しいのですが、数字にしてしまうと分かりやすくなります。太陽が空のどのくらいの高さにあるかで、人の足元にできる影の長さが変わります。影が短ければ光は真上から、影が長ければ光は横から当たっているということです。福井のあたりで、その高さがどう動くかを並べてみます。
| そのときの太陽 | 空にある高さ | 影の長さ(身長のおよそ何倍か) |
|---|---|---|
| 夏至ごろの正午 | およそ77度 | 0.2倍ほど |
| 春分・秋分ごろの正午 | およそ54度 | 0.7倍ほど |
| 冬至ごろの正午 | およそ30度 | 1.7倍ほど |
| 日の入りの2時間前 | 18度から23度 | 2.4倍から3.1倍 |
| 日の入りの1時間前 | 9度から11度 | 5倍から6倍 |
福井(北緯およそ36度)での2026年の値をもとにした、めやすの数字です。年によって少し前後します。
夏の真昼、影が身長の五分の一しかないというのは、光がほとんど真上から降ってきているということです。同じ人が同じ場所に立っていても、日の入りの一時間前には、影は身長の五倍ちかくに伸びています。光は横から来ています。写真としては、この二つはまるで別の場所のように写ります。
大事なのは、この高さがどの会場を選んでも同じように動く、ということです。太陽は会場の持ちものではありません。写真映えという言葉が会場の手柄のように語られるとき、その中身の半分くらいは、じつは会場の属性ではないのだと思います。光が「どちらから」入るかという向きの話はテラス・庭・館内。結婚式の会場は、何を手がかりに選ぶかに、季節ごとに日の入りが何時になるかは日本海に夕日が沈む時間帯は、季節でどう変わるかにまとめてあります。
結婚式場選びで、写真映えより先に考えたいことは何か
FIRST THINGS
三つあります。いずれも、会場の見た目そのものの話ではありません。
写真映えより先に置きたい、三つのこと
- 招いたご家族が、その場所で普段どおりでいられるか
- よく写る一角ではなく、一日を過ごす場所そのものがどう見えるか
- 何を残したいのかが、先に言葉になっているか
一つめ。写真に写る顔つきは、その人がその場所でくつろげているかどうかに、そのままつながります。招くのが十名から十五名であれば、名前を呼べば全員が振り向く距離です。その距離で一日を過ごすのですから、場所がその人たちに合っているかどうかは、背景の美しさより先に効いてきます。人数のことそのものは少人数の結婚式とは。10〜15名で挙げるという考え方に書きました。
二つめ。一角と呼べるくらいですから、そこはそう広い場所ではありません。そこで写真を撮るとしても、一日のうちのごく一部の時間です。残りの時間、ご家族は食卓にいるかもしれませんし、外を眺めているかもしれません。その、なんでもない場所がどう見えるか。一日のうちで長い時間を占めるのは、そちらのほうです。
三つめ。何を残したいのかが先にあると、会場の見方が変わります。両親の顔を残したいのか、家族が並んでいるところを残したいのか、その土地の風景ごと残したいのか。それによって、同じ会場でも見るべきところが違ってきます。この順番については写真家がプロデュースする結婚式、という考え方にまとめてあります。なお、その日その会場を使うのが一組だけであれば、ほかの組の参列者が写り込むことはありません。その事情は結婚式当日、会場に他の組が入らないとどうなるか。貸切という選び方にあります。
会場の写真からは、何が分かって、何が分からないのか
WHAT A PHOTO SHOWS
形は分かります。時間の流れは分かりません。
| 会場の写真から分かること | 同じ写真からは分からないこと |
|---|---|
| 建物や庭の形、素材、色 | その日の天気がどうなるか |
| 窓の大きさ、天井の高さ | 光がどちらから、どのくらいの高さで入るか |
| どんな景色が見えるか | 音がどう聞こえ、風がどう通るか |
| ある一角の、ある角度からの見え方 | そこで一日を過ごしたときの居心地 |
| 片づいた状態の広さ | 十名から十五名が座ったときの距離感 |
右の列は、写真には写らないものばかりです。だから下見に行くのだと思います。見に行くのは、写真ですでに見たものを確かめるためではなく、写真に写っていないほうを確かめるためです。会場でどんなことを聞いておくとよいかはテラス・庭・館内。結婚式の会場は、何を手がかりに選ぶかに、そもそも貸し切るとは何を指すのかは結婚式場を「貸し切る」ということにまとめています。
会場選びと写真について、もう少し詳しく
TO GO FURTHER
一日のどこに何時を置くかという話は結婚式当日のスケジュールは、何時間で考えるものかに、泊まる場所まで含めて会場を考える話は結婚式の会場を、宿泊まで含めて選ぶ。同じ敷地に泊まるという考え方にあります。福井・日本海のほとりの二つの会場そのものは会場のページに、11時のチェックインから翌朝までの並びは一日の流れのページに、総額の目安と内訳はプランのページに置いています。
結婚式場は、写真映えで選んでよいですか?
手がかりのひとつにはなりますが、いちばん先に置く基準ではないと考えています。写真に写るのは、場所と、光と、人の三つです。このうち会場の見学で確かめられるのは場所だけで、あとから見返したときに目がいくのは、残りの二つのほうです。
会場の写真がきれいなら、当日も同じように写りますか?
同じとはかぎりません。会場の写真から分かるのは、建物や庭の形、窓の大きさ、見える景色といった「形」の部分です。その日の天気、光の入る向きと高さ、十名から十五名が座ったときの距離感は、写真には写りません。下見では、写真に写っていないほうを見ておかれるとよいと思います。
写真がきれいに写る時間帯はありますか?
光の条件は、その日その時刻の太陽の高さでおおよそ決まります。福井のあたりでは、夏至ごろの正午は太陽の高さがおよそ77度で影は身長の0.2倍ほど、日の入りの1時間前はどの季節も9度から11度で影は5倍から6倍に伸びます。真上からの光と横からの光では、同じ場所でも見え方が変わります。どの時刻に何をするかは、お打ち合わせのなかで一緒に決めていきます。
写真映えという言葉が、指していないもの
写真映えという言葉は、背景のことを言っています。けれど写真を開くとき、私たちが見ているのは背景ではありません。そこにいた人が、その日どんな顔をしていたか。それを見るために開きます。背景は、その顔がどこにあったかを教えてくれるものとして、後ろに写っていればいい。順番としては、そういうことだと思うのです。
ですから会場をご覧になるときは、きれいに撮れそうな一角より先に、ご家族がそこでどんな顔をしていそうかを想像してみてください。その想像がしやすい場所が、たぶん合っている場所です。どんな一日にしたいかは、まだ言葉になっていなくてかまいません。

